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顧客ロイヤリティとは?向上させる5つの施策と「失敗しない」ための戦略設計ガイド

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顧客ロイヤリティを高める5つの施策と戦略設計を図解で解説するマーケティング記事

「リピート率が頭打ちになっている」「NPSを導入したのに、具体的な改善アクションにつながらない」——こうした悩みを抱えるマーケティング担当者や経営者は少なくありません。

顧客ロイヤリティの向上は、単なる「お客様を大切にしましょう」という精神論では実現できません。戦略的な仕組みが必要です。

ONE SWORDでは300社以上の支援を通じて、施策が空回りする企業と着実に成果を出す企業の違いを見てきました。本記事では、ロイヤリティ向上施策の本質・ロイヤリティプログラムの正しい設計・LTV向上につながる打ち手に絞って解説します。


【本記事でわかること】
  • 定義: 心理的ロイヤリティと行動的ロイヤリティの違い

  • 施策: 顧客体験(CX)改善からコミュニティ形成まで5つの具体策

  • プログラム設計: ロイヤリティプログラムで「金で買ったロイヤリティ」に陥らない方法

  • LTV戦略: 継続率・単価・頻度を同時に引き上げるLTV最大化の設計

1. 顧客ロイヤリティ(ロイヤルティ)とは?【図解で30秒解説】

顧客ロイヤリティとは、顧客が特定のブランドに対して抱く「信頼・愛着」であり、継続購入や他者への推奨を生み出す心理的な絆です。

英語の「Loyalty(忠誠心)」に由来し、日本語では「ロイヤリティ」「ロイヤルティ」の両表記が使われます。ビジネスにおいては、「この会社から買いたい」「他の人にも勧めたい」という感情と行動の総体を指します。

「心理的ロイヤリティ」と「行動的ロイヤリティ」の違い

顧客ロイヤリティを正しく理解するには、2つの軸で捉える必要があります。

種類

定義

特徴

心理的ロイヤリティ

ブランドへの愛着・信頼・共感

感情的なつながり。競合の値下げに動じない

行動的ロイヤリティ

実際の購買頻度・継続利用

数値で測定可能。ただし「惰性」も含む

この2軸をマトリクスで整理すると、顧客は4つのタイプに分類できます。

  • 真のロイヤル顧客(心理◎・行動◎):愛着があり、実際にリピートしている。最も価値の高い顧客層

  • 潜在的ロイヤル顧客(心理◎・行動△):好意はあるが、購買機会が少ない。アプローチ次第で化ける

  • 見せかけのロイヤル顧客(心理△・行動◎):惰性やスイッチングコストで買い続けているだけ。競合に奪われやすい

  • 非ロイヤル顧客(心理△・行動△):関係性が薄い。獲得コストに見合わない可能性

重要なのは、行動だけを見て「この顧客はロイヤルだ」と判断しないことです。 ポイント還元や割引で繋ぎ止めている顧客は、より高い還元率を提示する競合に簡単に流出します。これが「見せかけのロイヤリティ」の正体です。

顧客満足度(CS)と顧客ロイヤリティの決定的な違い

「顧客満足度が高ければロイヤリティも高いはず」——この認識は誤りです。

指標

測定対象

時間軸

ビジネスインパクト

顧客満足度(CS)

過去の体験に対する評価

現時点

満足でも離脱することがある

顧客ロイヤリティ

未来の購買・推奨意欲

将来

LTV・口コミに直結

Harvard Business Reviewに掲載されたJones & Sasserの研究によると、「満足」と回答した顧客の40〜80%が離脱することが明らかになっています。満足度は「不満がない状態」を示すに過ぎず、「他社より選ばれる理由」にはなりません。

ロイヤリティの高い顧客は、多少の不満があっても離れません。なぜなら、そのブランドとの関係に感情的な価値を見出しているからです。

ロイヤリティの正体は「期待値のコントロール」にある

多くの企業が「期待以上のサービス(感動)」を提供しようと必死になりますが、実はこれが落とし穴です。

ONE SWORDが300社の支援で導き出したロイヤリティの方程式は以下の通りです。

ロイヤリティ = (体験価値 − 事前期待) × 一貫性

どんなに素晴らしいサービスも、たまにしか提供できなければ(一貫性がなければ)、信頼は生まれません。また、広告で期待値を上げすぎると、実際の体験が良くても「がっかり」されます。

「当たり前のことを、驚くほど徹底して、毎回やり続けること」。 これこそが、最強のロイヤリティ戦略です。

2. ロイヤリティを測定する指標とNPSの活用

「ロイヤリティを高めよう」と言っても、現状が見えなければ改善のしようがありません。施策を打つ前に、計測の仕組みを整備することが先決です。

NPS®(ネット・プロモーター・スコア):推奨度を測る世界標準指標

ロイヤリティを測定する指標としてNPSが最も広く使われています。「この商品/サービスを親しい友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問に0〜10点で回答してもらい、以下のように分類します。

  • 推奨者(9〜10点):熱狂的なファン。積極的に口コミする

  • 中立者(7〜8点):満足しているが、競合に流れる可能性あり

  • 批判者(0〜6点):不満を持ち、ネガティブな口コミをする可能性

NPS = 推奨者の割合(%) − 批判者の割合(%)

NPSは−100〜+100の範囲で算出され、業界平均との比較や経年変化の追跡に活用されます。ただし、スコアの上げ方を誤ると「数字ゲーム」になりがちです。NPSの活用方法と落とし穴については以下の記事で詳しく解説しています。

NPS®が「改善しない」本当の理由。300社の支援でわかった『スコアの罠』と売上向上の鉄則

LTV(ライフタイムバリュー):施策効果を収益で測る

LTVは、1人の顧客が生涯を通じてもたらす収益の総額です。

基本的な計算式は以下の通りです。

LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間

ロイヤリティ向上施策の効果は、最終的にLTVの上昇として現れます。NPSが「感情」を測るとすれば、LTVは「結果」を測る指標です。

LTV(顧客生涯価値)とは?【売上計算は危険】正しい計算式と「施策が失敗する」3つの理由

継続利用率(リピート率)と解約率(チャーンレート)

  • リピート率:一定期間内に再購入した顧客の割合

  • チャーンレート:一定期間内に離脱(解約)した顧客の割合

特にサブスクリプションビジネスでは、チャーンレートの1%の改善が収益に大きなインパクトを与えます。

チャーンレート改善の決定版|計算式・目安より重要な「3つの根本原因」と「PMFの罠」

「数字遊び」にしないための注意点

筆者の経験上、失敗する企業の多くは以下のパターンに陥っています。

  • NPSを測定しているが、スコアを上げるための具体的アクションがない

  • 「NPSが上がった」と喜んでいるが、LTVは横ばい

  • 部署ごとにバラバラの指標を追いかけ、全社最適になっていない

指標は「健康診断」であり、それ自体が治療ではありません。 数値の裏にある顧客の声に耳を傾け、具体的な改善アクションに落とし込むプロセスがなければ、測定は無意味です。

3. 顧客ロイヤリティを向上させる5つの具体的施策

ここからは、実際にロイヤリティを高めるための施策を解説します。重要なのは、これらを単発で実施するのではなく、統合的な戦略の中で位置づけることです。

施策1:顧客体験(CX)のフリクションを徹底排除する

まずは、顧客が感じる「面倒・不便」をゼロにすることです。 感動を与える前にマイナスをなくすことが、ロイヤリティ向上の最短ルートです。

具体的には以下のチェックリストを活用してください。

  • Webサイトの読み込み速度は3秒以内か

  • 問い合わせへの初回回答は24時間以内か

  • 購入・解約の手続きは3ステップ以内で完了するか

  • 部署間で情報が共有され、顧客に同じ説明をさせていないか

「感動を与える」以前に、「不快を与えない」ことが土台です。カスタマージャーニーを可視化し、離脱ポイントを特定することから始めましょう。

ONE SWORDの支援先でも、フリクション排除のみで初月のリピート率が改善したケースを複数確認しています。大掛かりな施策よりも、まずこの「マイナスの解消」が先です。

施策2:特別感を提供する「ロイヤリティプログラム」の設計

優良顧客に「自分は特別だ」と感じてもらう仕組みを構築します。

効果的なプログラムの要素は以下の3つです。

  • 会員ランク制度:利用実績に応じた特典の差別化

  • 限定アクセス:新商品の先行販売、限定イベントへの招待

  • ポイント還元:ただし、これだけに頼らない(後述の「落とし穴」参照)

ここで重要なのは、金銭的メリットだけでなく「体験価値」を提供することです。「1,000円オフ」より「VIP限定の試食会」の方が、感情的なつながりを生みます。

ロイヤリティプログラムの設計については次のセクション(第4節)で詳しく解説します。

施策3:One to Oneコミュニケーション(パーソナライズ)の実践

顧客一人ひとりに合わせたメッセージを届けます。

実践例は以下の通りです。

  • 購買履歴に基づいたレコメンデーション

  • 誕生日や記念日のパーソナルメッセージ

  • 行動データに基づいたタイミング最適化

「あなたのことを理解している」というシグナルが、ロイヤリティを高めます。ただし、過度なパーソナライズは「気持ち悪い」と感じられるリスクもあるため、バランスが重要です。

ONE SWORDの支援先EC企業でも、誕生月に送るパーソナライズメールが通常メールよりCVRが大幅に高く、そのメールを経由した購買顧客の翌月リピート率も高い結果が出ています。

施策4:コミュニティ形成による「ファン化」の促進

顧客同士がつながる場を提供し、ブランドを中心としたコミュニティを育てます。

効果的なアプローチは以下の3つです。

  • ユーザー参加型のイベント開催

  • オンラインコミュニティ(Slack、Facebookグループなど)の運営

  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進

コミュニティに所属することで、顧客は「このブランドの一員」というアイデンティティを持ちます。これは競合への乗り換えを心理的に困難にします。

注意点として、コミュニティ運営は継続が命です。立ち上げて放置したコミュニティは逆にブランドイメージを傷つけます。担当者のアサインと運用ルールを決めてから始めることを強く推奨します。

施策5:従業員満足度(ES)の向上(インターナルブランディング)

顧客に最高の体験を届けるのは、最前線の従業員です。

従業員がブランドに誇りを持ち、働きがいを感じていなければ、顧客への対応にそれが表れます。

  • 従業員がブランドの価値観を理解し、体現しているか

  • 現場の声が経営に届く仕組みがあるか

  • 顧客対応で裁量を持てる環境か

「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」という言葉の通り、社内のロイヤリティが社外のロイヤリティに直結します。

ES向上を後回しにしている企業ほど、CX施策に投資しても従業員の離職率が高く、せっかく築いた顧客との関係が担当者の交代で壊れるという悪循環に陥っています。

4. ロイヤリティプログラムの正しい設計——「金で買ったロイヤリティ」からの脱却

300社以上の支援で最も多く見た失敗パターンがこれです。ポイント還元と割引クーポンに予算を集中させた結果、LTVは上がらず利益率が圧迫される。

なぜこうなるのか、そしてどう設計すれば正しいロイヤリティプログラムになるのかを解説します。

ポイント制度の「罠」——価格感度の高い顧客層を育ててしまう

ポイント還元や割引クーポンは、最も手軽に始められるロイヤリティ施策です。しかし、これだけに頼ると危険です。

  • ポイント目当ての顧客は、より高い還元率を出す競合にすぐ流れる

  • 「割引がないと買わない」という価格感度の高い顧客層を育ててしまう

  • 利益率を圧迫し、ブランド価値を毀損する

金銭的メリットで繋ぎ止めた顧客は、金銭的メリットで奪われます。 これは「見せかけのロイヤリティ」であり、真のロイヤリティとは本質的に異なります。

実際にONE SWORDが支援したアパレルECでは、ポイント10倍セールを月1回実施したところ、セール時の売上は伸びたものの、通常月の売上が落ちました。年間LTVを計算すると、セール前より低下していたのです。

「経済的価値」と「感情的価値」の2軸で設計する

正しいロイヤリティプログラムは、金銭的メリット(経済的価値)と感情的なつながり(感情的価値)の両方を組み合わせます。

価値の種類施策例顧客への訴求
経済的価値ポイント還元、送料無料、会員割引「お得に買える」
感情的価値VIP先行販売、限定イベント、担当者制度「自分だけが特別」
体験価値工場見学、制作背景の共有、共同開発参加「このブランドの一員」

重要なのは、感情的価値・体験価値の比率を高めることです。金銭的価値だけのプログラムは真似されますが、感情的価値は簡単に複製できません。

会員ランク設計の4原則

効果的な会員ランク制度を設計するには、以下の4つの原則を守ってください。

原則1:ランク昇格の達成感を設計する

ランクアップの条件は「頑張れば届く」レベルに設定します。遠すぎると諦められ、近すぎると達成感がありません。支援先の観察では、上位層だけが独占するのでなく一定の顧客が到達できる設定が継続率を高める傾向があります。

原則2:上位ランク特典に「代替不能な価値」を入れる

金銭的特典だけでなく、お金で買えない体験を上位ランクに入れます。「ブランドの裏側を見せてもらえる」「担当者から直接連絡が来る」といった体験価値は、解約を心理的に困難にします。

原則3:ランクダウンの「崖」を緩和する

ランクが下がることへの抵抗感は強く、これが解約トリガーになるケースがあります。いきなりランクダウンするのではなく、「3ヶ月間のステータス維持期間」を設けることで、離脱を防げます。

原則4:定期的に「ランクの見直し」を通知する

会員は自分のランク状況を把握していないことが多いです。「あと○○円でゴールドランクです」という通知が行動を促します。支援先の通知改善施策でも、上位ランク到達率が大きく向上したケースを確認しています。

成功事例:BtoC定期通販でのロイヤリティプログラム再設計

あるBtoC定期通販企業は、解約率の高さに悩んでいました。ポイント還元率を引き上げても解約率は改善しませんでした。

分析の結果、解約理由の第1位が「飽き」であり、価格不満ではありませんでした。そこでプログラムを以下のように再設計しました。

  • ポイント還元率は据え置き、代わりに「3ヶ月継続者限定の製造工場見学会」を設置

  • 6ヶ月継続者には「新商品開発に意見を言えるテスターグループ」への招待

  • 12ヶ月継続者には商品パッケージに名前が入る「ファウンダー認定制度」

施策開始後、解約率が大幅に改善し、SNSでのUGC投稿数も増加しました。費用は工場見学の運営費のみで、ポイント還元コストより大幅に低い結果でした。

5. LTV向上施策——継続率・購入頻度・単価を同時に引き上げる

ロイヤリティ向上の最終ゴールはLTVの最大化です。LTVの計算式を再掲します。

LTV = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間(継続率から算出)

この式に対して、それぞれを上げる施策を整理します。

継続期間を延ばす:解約タイミングの「先手」を打つ

解約は「突然」起きません。行動データを見ると、解約の前に必ずシグナルがあります。

  • ログイン頻度の低下

  • 購入間隔の延長

  • サポート問い合わせの増加(または完全な沈黙)

ONE SWORDの支援先SaaS企業では、ログイン頻度が大きく低下した顧客に対してカスタマーサクセスが先手で連絡を入れる仕組みを構築しました。結果として、解約予備軍の多くを継続に転換することに成功しています。

「解約を防ぐ」のではなく「解約理由が生まれる前に価値提供する」という発想の転換が重要です。

購入頻度を上げる:「次の購入理由」を先回りして設計する

購入頻度を上げるには、次に買いたくなる理由を先回りして植え付けることが重要です。

  • 購入直後に「次回使えるクーポン」を渡す(有効期限を短めに設定)

  • 使い切りタイミングを計算した「補充リマインド」の自動送信

  • 季節・イベントに連動したコンテンツ配信による「使いたい欲求」の喚起

ここで陥りがちな失敗は、購入直後に何もコミュニケーションしないことです。購入直後は顧客のブランドへの関心が最も高い瞬間です。この「ゴールデンタイム」を無駄にしている企業が非常に多い。

平均単価を上げる:ロイヤル顧客への「アップセル設計」

新規顧客へのアップセルは成功率が低く、関係が浅いうちに高額商品を勧めると信頼を損ないます。一方、ロイヤル顧客は購入意欲が高く、適切な提案には抵抗が少ない。

アップセルが機能するタイミングは以下の通りです。

  • 購入から30日後(使用感が出てきた頃)の上位プラン案内

  • NPS調査で推奨者(9〜10点)と回答した直後のオファー

  • 年間利用頻度が一定閾値を超えたタイミングでの「まとめ買い提案」

重要なのはタイミングと文脈です。「あなたの使い方なら、このプランの方が実はお得です」という文脈で提案することで、売り込みではなく「助言」として受け取ってもらえます。

LTV向上の優先順位

3要素のどれから手をつけるべきか。答えは業種によって異なりますが、ONE SWORDの支援経験では以下の順番が最も効果的なケースが多いです。

  1. 継続期間(解約防止)を先に手当てする——穴の空いたバケツに水を注いでも意味がない

  2. 次に購入頻度を上げる——定期的な接点を設計する

  3. 最後に単価——関係性が深まってからアップセルする

この順番を逆にして、まず単価を上げようとする企業が多いですが、顧客との関係が浅い段階での高額提案は解約を加速させます。

6. なぜ施策が機能しないのか?ロイヤリティ向上の「落とし穴」

ここまで紹介した施策は、すでに多くの企業が取り組んでいます。しかし、成果が出る企業と出ない企業に分かれるのが現実です。

その差は何か。300社以上の支援を通じて見えてきた「落とし穴」を共有します。

落とし穴1:部分最適の罠——部署間の壁が「一貫性」を破壊する

「マーケティング部門がキャンペーンで集客した顧客に、営業が全く違うトーンで接する」「カスタマーサポートが把握していない情報を、顧客が持っている」——こうした部署間の分断は、顧客体験を著しく損ないます。

  • CS部門だけがロイヤリティ向上を掲げても、他部署が非協力的では成果は出ない

  • 顧客接点ごとに体験が分断され、「この会社、ちゃんとしていないな」という印象を与える

ロイヤリティは「点」ではなく「線」で形成されます。 顧客接点すべてにおいて一貫した体験を提供できなければ、個別施策の効果は相殺されます。

落とし穴2:「全体像(戦略OS)」なき施策は空回りする

ツールを導入しても成果が出ない。施策をやっても効果が続かない。その根本原因は何か。

「戦略の全体像」が整理されていないことです。

PCに例えるなら、OS(オペレーティングシステム)が古いまま、最新のアプリをインストールしても動かないのと同じです。

  • 何を目指しているのか(ゴール)

  • 誰に対して価値を届けるのか(ターゲット)

  • 自社の強みは何か(ポジショニング)

  • 各施策はどう連携するのか(統合)

これらが「共通言語」として組織に浸透していなければ、どんな施策も部分最適で終わります。

落とし穴3:指標の過多——何でも測れば何でも改善できるわけではない

ロイヤリティ向上に取り組む際、多くの企業が「全部測ろう」とします。NPS、LTV、リピート率、チャーンレート、CSAT……測定指標が増えれば増えるほど、どれを優先すべきかわからなくなります。

ONE SWORDが支援先に推奨するのは、まず1〜2つの指標に絞って改善にコミットすることです。

  • スタートアップ期:チャーンレートのみに集中

  • 成長期:LTVとNPSのセットで追跡

  • 成熟期:セグメント別LTVで顧客層を最適化

「全部よくしたい」は「何もよくならない」に等しい。選択と集中が、ロイヤリティ改善でも本質です。

7. 成功事例に学ぶロイヤリティ戦略

事例1:スターバックス——デジタルとリアルを融合した「居場所」の提供

スターバックスのロイヤリティ戦略は、単なるポイントプログラムを超えています。

成功のポイント:
  • 体験価値の設計:「サードプレイス(第三の居場所)」というコンセプトで、コーヒー以上の価値を提供

  • モバイルアプリ:事前注文、決済、ポイント管理をシームレスに統合

  • パーソナライズ:購買履歴に基づいたレコメンドとオファー

  • コミュニティ:季節限定商品やカスタマイズ文化によるファン同士のつながり

注目すべきは、デジタルとリアルの体験が分断されていない点です。アプリでの体験が店舗での体験を補完し、その逆も然りです。

事例2:国内BtoB SaaS企業——顧客の成功を第一に考えた伴走支援

あるBtoB SaaS企業は、解約率の高さに悩んでいました。機能追加やサポート体制強化を行っても、数値は改善しませんでした。

転機となったのは、「顧客の成功(カスタマーサクセス)」を全社の最優先事項に据えたことです。

  • 営業は「売ること」ではなく「顧客の課題解決」にKPIをシフト

  • CS部門は「問い合わせ対応」から「能動的な活用支援」へ役割を再定義

  • 経営陣が顧客訪問に同行し、現場の声を直接聞く文化を構築

施策開始後、解約率が大幅に改善し、既存顧客からの紹介数も増加しました。

この事例が示すのは、「施策」ではなく「組織の向き合い方」が変わることで、ロイヤリティは飛躍的に高まるということです。

8. まとめ:ロイヤリティ向上は一日にして成らず

本記事の要点を整理します。

顧客ロイヤリティの本質:
  • 顧客ロイヤリティとは、顧客が企業やブランドに抱く信頼・愛着であり、将来の購買・推奨行動につながる心理的結びつき

  • 「心理的ロイヤリティ」と「行動的ロイヤリティ」の両方が揃って、真のロイヤル顧客となる

  • 顧客満足度が高くても、ロイヤリティが低ければ離脱する(40〜80%が離脱するデータあり)

5つの具体的施策:
  1. 顧客体験のフリクション徹底排除

  2. ロイヤリティプログラムの設計(感情的価値を組み込む)

  3. One to Oneコミュニケーション

  4. コミュニティ形成

  5. 従業員満足度の向上

ロイヤリティプログラム設計の原則:
  • ポイント・割引だけに頼らない(金銭的価値は模倣されやすい)

  • 感情的価値・体験価値を上位ランク特典に組み込む

  • 解約予備軍に「先手」でアプローチする仕組みを持つ

LTV向上の優先順位:
  1. 継続期間(解約防止)→ 2. 購入頻度 → 3. 平均単価の順で施策を設計する

ロイヤリティ向上は、一夜にして成し遂げられるものではありません。 しかし、正しい順番で正しい施策を積み重ねれば、確実に成果は現れます。

その第一歩は、「今、自社はどこにいて、どこに向かうべきか」を明確にすること。

顧客との関係を深め、持続的な成長を実現するために——まずは自社の戦略を、一度立ち止まって見直してみてください。


顧客ロイヤリティを高める施策を実行に移すには、「戦略の全体像」が不可欠です。ONE SWORDの新規事業立ち上げキットでは、ロイヤリティプログラム設計・LTV最大化・ファネル設計の実践フレームワークをまとめて提供しています。300社以上の支援で蓄積したノウハウを体系化した教材で、施策の「正しい順番」を手に入れてください。

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よくある質問

Q: 顧客ロイヤリティと顧客満足度はどう違うのですか?

顧客満足度(CS)は「過去の体験に対する評価」であり、現時点での感情を測ります。一方、顧客ロイヤリティは「将来の購買・推奨意欲」であり、未来の行動を予測するものです。Harvard Business Reviewの研究では、「満足」と答えた顧客の40〜80%が離脱することが示されており、満足度が高くてもロイヤリティが低いケースは多く存在します。ロイヤリティ向上には、満足度を超えた「感情的なつながり」の構築が必要です。

Q: NPSとロイヤリティは同じものですか?

NPSはロイヤリティを測定するための指標の一つですが、同じものではありません。NPSは「推奨意欲」という1つの側面を切り取ったスコアです。ロイヤリティ自体はより広い概念で、継続購買率・LTV・チャーンレートなど複数の指標で総合的に評価する必要があります。NPSは「感情面」を、LTVは「結果面」を測る指標と考えると整理しやすいです。詳しくはNPS記事を参照してください。

Q: ロイヤリティプログラムにどのくらいの予算が必要ですか?

ポイント還元を主軸にする場合は売上の2〜5%が相場ですが、本記事で解説した「感情的価値・体験価値」を組み込む場合は金銭的コストを抑えながら高い効果を出せます。ONE SWORDが支援した定期通販企業では、工場見学会という感情的価値施策がポイント還元より高い継続率改善効果を出しました。重要なのは「いくらかけるか」ではなく「どんな価値を提供するか」の設計です。

Q: BtoBビジネスでもロイヤリティプログラムは有効ですか?

有効です。ただしBtoBの場合、個人向けポイント制度は組織的な購買意思決定とマッチしないことが多いです。BtoB向けのロイヤリティ施策として効果的なのは、①専任担当者の設置(顔の見える関係性)、②上位顧客向けの情報先行提供(新機能・市場情報など)、③共同事例研究・勉強会への招待などです。ONE SWORDの支援先でも、専任担当者制度の導入だけで更新率が大きく向上したケースがあります。

Q: ロイヤリティ向上の効果はどのくらいで出ますか?

施策の種類によって異なります。フリクション排除(CX改善)は1〜2ヶ月で効果が出やすい一方、コミュニティ形成やインターナルブランディングは6〜12ヶ月のスパンで評価する必要があります。ロイヤリティプログラムの再設計は、設計から展開まで3〜6ヶ月かかりますが、効果は中長期にわたって持続します。短期KPIと中長期KPIを分けて設定し、焦らず積み上げることが成功のカギです。

Q: リピート率が低い原因がわかりません。どこから調べればよいですか?

まず「最初の離脱タイミング」を特定することから始めてください。初回購入後に次の購入がない顧客が多いのか、それとも数回購入後に止まっているのかで、原因と施策が異なります。初回→2回目の転換率が低い場合は、購入直後のコミュニケーション(ウェルカムメール・使い方ガイドなど)が不足している可能性が高いです。2回目以降の離脱が多い場合は、商品・サービスの「飽き」や「競合移行」が原因のことが多く、体験価値の向上が必要です。


【参考文献・出典】
  • Bain & Company「Loyalty Rules!」Frederick Reichheld

  • Harvard Business Review「The Value of Keeping the Right Customers」

  • Harvard Business Review「Why Satisfied Customers Defect」Jones & Sasser

  • Wharton School of Business「Referral Programs and Customer Value」

  • Starbucks Official「Reclaiming Third Places」

執筆・監修

ONE SWORD編集部ONE SWORD株式会社

300社以上の新規事業支援実績をもとに、フレームワーク・事業計画書・マーケティング戦略を実践的に解説。中小企業の経営者・新規事業担当者に向けたビジネスメディアの編集チームが執筆・監修しています。

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