マーケティング

カスタマージャーニーマップの作り方【完全版】プロが教える「成果が出る5ステップ」

「カスタマージャーニーマップを作れと言われたが、何から手をつければいいかわからない」

「以前作ったものの、会議室の壁のシミになり、誰も見ていない」

もしあなたが今、そんな状況なら、この記事がお役に立てるはずです。

米ガートナー社の調査によると、カスタマージャーニーマップを作成した企業のうち、効果的に活用できているのは約半数(47%)に留まるとされています。つまり、残りの半数以上が「作っただけの状態」に陥っているのです。

なぜ、こうした事態が起きるのか。私たちはこれまで300社以上のマーケティング現場を支援する中で、その原因を目の当たりにしてきました。多くの場合、問題は「マップを綺麗に描くこと」をゴールにしてしまっていることにあります。

本記事では、教科書的な定義は最小限に留め、「チームを動かし、売上に繋げるためのマップ作成法」を、プロの視点で5つのステップに分解して解説します。

記事の後半では、私たちが実際のコンサルティング現場で使用している「マップ作成テンプレート」も公開します。ぜひ、読みながら手を動かしてみてください。

単なる「図解」ではなく、あなたのビジネスの「勝ち筋」を見つける旅を始めましょう。

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カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを認知してから購入し、ファンになるまでの体験プロセスを可視化した図です。

顧客の「行動」「思考」「感情」「企業との接点(タッチポイント)」を時系列で整理することで、どこに課題があり、どこに投資すべきかが一目でわかるようになります。

定義はこれだけ知っていれば十分です。重要なのは「何か」ではなく「どう作り、どう使うか」。早速、本題に入りましょう。

なぜカスタマージャーニーマップを作るのか?3つのメリット

メリットを長々と説明する記事は多いですが、あなたがこの記事を読んでいるということは、すでに「作る必要がある」とわかっているはずです。上司説得用に必要な方のために、要点だけまとめます。

メリット

具体的な効果

①顧客理解の解像度が上がる

「なぜ買ったか」「どこで迷ったか」が可視化され、隠れたインサイトを発見できる

②チームの認識が揃う

営業・マーケ・CS間の「顧客像のズレ」が解消され、意思決定が速くなる

③施策の優先順位が明確になる

どのフェーズがボトルネックかがわかり、リソースを集中投下できる

【BtoB vs BtoC】作る前に知っておくべき決定的な違い

「カスタマージャーニーマップの作り方」で検索すると、BtoCの事例(アパレル、飲食など)ばかり出てきます。しかし、BtoBとBtoCでは、マップの設計思想が根本的に異なります

項目

BtoC

BtoB

意思決定者

基本的に1人(本人)

複数人(担当者→上司→経営層→購買部門)

検討期間

短い(数分〜数週間)

長い(数ヶ月〜1年以上)

購買動機

感情・衝動が大きい

論理・ROIが重視される

タッチポイント

広告、SNS、店舗、口コミ

展示会、ウェビナー、営業、導入事例

マップの粒度

比較的シンプルでOK

「社内稟議」「複数部門の調整」まで描く必要あり

【ONE SWORD流チェックポイント】
BtoBの場合、「ペルソナ」を1人に絞るだけでは不十分です。私たちは「DMU(Decision Making Unit:意思決定関与者)マップ」を併用し、担当者・推進者・決裁者・阻害者それぞれの思考と感情を別々に可視化します。これをやらないと、「担当者は気に入ったのに、上司がNOと言って失注」というパターンを防げません。

【実践】成果が出るカスタマージャーニーマップの作り方 5ステップ

ここからが本題です。300社以上の支援現場で培った知見をもとに、「実際に使われるマップ」の作り方を5つのステップで解説します。

各ステップに「プロの視点」を入れています。 ここが教科書との違いです。読み飛ばさず、ぜひ実践に活かしてください。

Step1. ゴールとペルソナを「尖らせる」

マップ作成で最も重要なのは、最初に「何のために作るのか」と「誰の旅を描くのか」を決めることです。

ゴールの設定

「カスタマージャーニーマップを作ること」をゴールにしてはいけません。マップを作った結果、何を達成したいのか? を明確にします。

  • 商談化率を上げたいのか?

  • 解約率(チャーン)を下げたいのか?

  • 新規リードの獲得コストを下げたいのか?

ゴールによって、フォーカスすべきフェーズが変わります。商談化率なら「比較検討→購入」を、解約率なら「利用→継続」を重点的に描いてください。

ペルソナの設定

マップの「主人公」となるペルソナを設定します。ここで絶対に守るべきルールは、ペルソナは1人に絞ること。

「20代女性も40代男性もターゲット」と言って両方のジャーニーを一つに描こうとするのは、失敗の典型パターンです。まずは、最も売上インパクトの大きい、あるいは最も課題を感じている顧客セグメントを1人選んでください。

【プロの視点:ペルソナ設定の落とし穴】

多くの企業が「35歳男性、IT企業勤務、年収600万円」で止めてしまいます。これでは何も見えてきません。 私たちが必ず特定するのは以下の3点です:

  1. 現在使っているツール/サービスへの具体的な不満(「〇〇の△△機能が使いにくい」レベルまで)

  2. 情報収集の習慣(どのメディアを見るか、誰の意見を信頼するか)

  3. 社内での立場と評価軸(何を達成すれば評価されるのか) ここまで解像度を上げると、「刺さるメッセージ」が自然と見えてきます。

Step2. フェーズ(横軸)と項目(縦軸)を設計する

マップの骨格となる「軸」を設定します。

横軸:フェーズ(顧客の旅のステージ)

一般的には以下の5〜6フェーズが使われます。

  1. 認知(Awareness): 課題に気づく/商品の存在を知る

  2. 興味・情報収集(Interest): 情報を集め始める

  3. 比較検討(Consideration): 複数の選択肢を比較する

  4. 購入・導入(Purchase): 購入を決定し、契約・導入する

  5. 利用・定着(Experience): 実際に使用し、価値を実感する

  6. 継続・推奨(Loyalty): リピート購入する/他者に薦める

ただし、これはあくまで汎用フレームです。自社のビジネスに合わせてカスタマイズしてください。

縦軸:顧客の内面と行動

項目

記載内容

行動(Doing)

具体的に何をしているか(検索、資料請求、問い合わせなど)

思考(Thinking)

頭の中で考えていること(「本当に必要か?」「他にないか?」)

感情(Feeling)

どんな気持ちか(期待、不安、焦り、満足など)

タッチポイント

企業との接点(Webサイト、広告、営業、CSなど)

課題/ペインポイント

顧客が感じている不満・障壁

【プロの視点:BtoBなら「社内フェーズ」を追加せよ】

BtoBの場合、私たちは縦軸に「社内調整状況」という項目を必ず追加します。

  • 「まだ一人で情報収集中」

  • 「上司に相談した」

  • 「他部署を巻き込み始めた」

  • 「稟議書を作成中」

  • 「最終決裁待ち」 これを可視化しないと、「なぜ商談が止まっているのか」が永遠にわかりません。

Step3. 顧客情報を「事実ベース」で収集・マッピングする

骨格ができたら、中身を埋めていきます。ここで最も避けるべきは「妄想で埋めること」です。

「たぶんこう思っているだろう」「こうあってほしい」という願望は、マップを使えないものにします。以下の方法で、徹底的に”事実”を集めてください

情報収集の4つの方法

方法

内容

優先度

①顧客インタビュー

購入理由、検討中の悩み、競合比較のポイントを直接聞く

★★★

②営業・CSへのヒアリング

よく聞かれる質問、失注理由、解約理由を収集

★★★

③行動データ分析

GA4やMAツールで、どのページで離脱したか、どのメールを開封したかを分析

★★☆

④アンケート・口コミ

購入後アンケート、SNS、レビューサイトの声を収集

★★☆

【プロの視点:インタビューで絶対にやってはいけない質問】

顧客インタビューで「なぜ購入しましたか?」と聞いてはいけません。 人間は自分の行動を後付けで論理的に説明しようとする生き物です。本当の理由ではなく、「それっぽい理由」が返ってきます。 代わりに、こう聞いてください:

  • 「購入を決めた”きっかけ”となった出来事は何でしたか?」

  • 「比較検討中、一番不安だったことは何ですか?」

  • 「もし当時の自分にアドバイスするなら、何と言いますか?」 これで、表面的な理由ではなく感情に紐づいたリアルな声が引き出せます。

マッピングのコツ

情報が集まったら、付箋やオンラインツール(Miro、FigJamなど)を使って、フェーズごとに貼り付けていきます。

この段階では完璧を目指さないこと。まずは荒くても全体像を描き、後から精度を上げる方がスムーズです。

Step4. 課題(ギャップ)を特定し、解決策を洗い出す

マップが埋まったら、顧客の「理想」と「現実」のギャップを探します。これが、施策を打つべき「課題」です。

課題発見のフレームワーク

各フェーズで以下の問いを投げかけてください:

  • このフェーズで顧客は何に困っているか?

  • 顧客が求めている情報・体験を自社は提供できているか?

  • 顧客が離脱する原因は何か?

  • 競合と比較して、自社が劣っている点はどこか?

【プロの視点:課題が見つかっても「全部やる」は最悪手】

マップを作ると、大量の課題が見つかります。しかし、全部に手を出すのは絶対にやめてください。リソースが分散し、何も成果が出ません。 私たちは「インパクト×実現可能性」のマトリクスで優先順位をつけ、最初の3ヶ月は1〜2個の課題に集中することを推奨しています。 ここで重要なのは、課題を「点」で見るのではなく、顧客の旅全体(=戦略)の中でどこがボトルネックかを見極める視点です。これについては後述します。

Step5. マップを「ストーリー」として可視化する

最後に、情報を整理して「見やすいマップ」に仕上げます。

ここで意識すべきは、マップは「読み物」であるということ。データを羅列するのではなく、顧客の旅が一つのストーリーとして読めるように構成してください。

ストーリー化の例(BtoB SaaS)

田中さん(35歳・マーケ部長)は、リード獲得の効率化に課題を感じていた。「MAツール」で検索し、複数の記事を読んだ後、3社の資料を請求。しかし、どのツールも機能が似ており、違いがわからず比較に苦労した。 上司に相談したところ「ROIを示せ」と言われ、各社に見積もりを依頼。A社は返信が遅く、B社は営業が強引で不信感を抱いた。C社だけが「導入後3ヶ月のROI試算シート」を提供してくれたため、稟議書が通りやすくなり、C社に決定した。

このように「人間」として描くことで、チームメンバーは顧客をリアルにイメージでき、マップは「壁の飾り」ではなく「意思決定のツール」になります。

活用できないマップ vs 成果を出すマップ

ここで、実際の現場でよく見る「活用されないパターン」と「成果に繋がるパターン」を対比してお見せします。

❌ 活用されないマップの特徴

  • 情報が詰め込みすぎ:フェーズが10個、縦軸が8項目、すべてのセルが文字でびっしり

  • 抽象的な記述:「興味を持つ」「不安を感じる」など、具体性がない

  • 事実ではなく願望:「こうあってほしい」という企業目線で書かれている

  • 課題の優先順位がない:問題点は書いてあるが、何から手をつけるかわからない

✅ 成果を出すマップの特徴

  • シンプル:5フェーズ×4〜5項目。A4用紙1枚で俯瞰できる

  • 具体的な記述:「〇〇で検索」「△△という不安」など、行動と感情が明確

  • 事実ベース:インタビューやデータに基づいている

  • 課題に優先順位がついている:「ここがボトルネック」と明示されている

  • 次のアクションが明確:マップを見れば「何をすべきか」がわかる

なぜ、カスタマージャーニーマップは「作っただけ」で終わるのか?

ここまで読んで、「よし、作ってみよう」と思った方。少しだけ待ってください。

冒頭でも触れましたが、米ガートナー社の調査によると、カスタマージャーニーマップを作成した企業のうち、効果的に活用できているのは約半数(47%)とされています。つまり、半数以上の企業が「作っただけ」の状態に陥っているのです。

なぜ、多くのマップは活用されないのか。その根本原因を3つに分けて解説します。

失敗原因①:妄想で作る(願望ジャーニーの罠)

最も多い失敗パターンです。

顧客インタビューもデータ分析もせずに、会議室で「きっとこう思っているはずだ」を繰り返す。その結果できあがるのは、企業側の「こうあってほしい」という願望を描いた”理想ジャーニー”です。

現実の顧客行動とはかけ離れているため、そのマップに基づいた施策はすべて空振りします。

失敗原因②:細かく作りすぎる(複雑性の罠)

もう一つの典型的な失敗は、マップを「芸術作品」にしてしまうこと

フェーズを10個に分け、縦軸を8項目にし、すべてのセルを詳細に埋める。確かに見栄えは良いかもしれません。しかし、そのマップは誰も更新できないし、誰も日常的に参照しない代物になります。

最初はシンプルに、5フェーズ×4項目程度で十分です。

失敗原因③:「全体戦略」との接続がない(手段の目的化)

そして、最も根深い失敗原因がこれです。

多くの企業がマップを作る動機は、「顧客視点が大事らしいから」「他社もやっているから」。そのため、マップを作ること自体がゴールになり、作った後に何をすればいいかわからない状態に陥ります。

カスタマージャーニーマップは、あくまで「現状を把握するための診断ツール」です。

診断結果をもとに、どこに投資し、何を改善し、どう成長するのか——その「全体戦略」との接続がなければ、マップは宝の持ち腐れになります。

言い換えれば、マップは「地図」に過ぎません。「どこに向かうのか」という羅針盤(=戦略)がなければ、地図だけ持っていても迷子になるのです。

「マップを作っても動かない」を解決する「マーケティング戦略OS」という考え方

カスタマージャーニーマップを「作っただけ」で終わらせないためには、それを全体戦略の中に位置づける視点が不可欠です。

私たちはこの全体戦略を、コンピューターの「OS(オペレーティングシステム)」になぞらえて、「マーケティング戦略OS」と呼んでいます。

部分最適ではなく、全体最適で考える

多くの企業のマーケティングは、「部分最適」の寄せ集めになっています。

「SNSのフォロワーを増やそう」「SEOで上位表示を狙おう」「Web広告のCPAを下げよう」——これらは間違いではありません。しかし、それぞれの施策がバラバラに動いていると、全体としての成果は最大化されません

OSの役割は、様々なアプリケーション(個別施策)を統合し、効率よく動かすこと。マーケティングにおいても、「認知→獲得→育成→成約→継続」という全体の流れを設計し、各施策がその流れの中でどの役割を担うのかを明確にする必要があります。

カスタマージャーニーマップは、この「OS」を設計するための重要なインプットになります。

優先順位を決める「思考の整理」がリーダーの仕事

「やるべきことが多すぎて、何から手をつければいいかわからない」

これは、マーケティング担当者から最も多く聞く悩みです。SNSもSEOも広告もメルマガもウェビナーも…。タスクは無限に湧いてきます。

しかし、すべてを同時にやろうとすれば、すべてが中途半端になるのは明らかです。

カスタマージャーニーマップと全体戦略(OS)は、この「優先順位の判断軸」を提供します。顧客のボトルネックはどこか? 投資対効果が最も高いのはどの施策か? それがわかれば、迷いなく「これをやる」「これは後回し」と決められるようになります。

さらに一歩先へ:「マーケティング戦略OS エッセンシャルプログラム」のご紹介

「マップは作れそうだが、その先の『全体戦略』をどう設計すればいいかわからない」

もしそう感じているなら、私たちがお手伝いできることがあります。

マーケティング戦略OS エッセンシャルプログラムは、300社以上の支援実績をもとに体系化した、「売れる仕組み」の全体像を構築するための実践キットです。

カスタマージャーニーを含む8つのコアフレームワークを、動画解説と実践ワークシートを通じて学べます。「初心者でも大丈夫?」という声をいただきますが、ゼロから順を追って手を動かしながら進められる構成になっているので、ご安心ください。

目指すのは、単なる「知識の習得」ではありません。プログラム終了後、あなた自身が「戦略OS」を持ち、迷いなく施策を実行できる状態になること。それが、このプログラムのゴールです。

▶︎ [プログラムの詳細を見る]

まとめ:「使われるマップ」を作り、成果に繋げよう

最後に、この記事の要点を振り返ります。

カスタマージャーニーマップとは?

  • 顧客の体験プロセスを可視化した「診断ツール」

  • 作ることがゴールではなく、課題発見と施策立案のための手段

成果が出る5ステップ

  1. ゴールとペルソナを「尖らせる」

  2. フェーズ(横軸)と項目(縦軸)を設計する

  3. 顧客情報を「事実ベース」で収集・マッピングする

  4. 課題(ギャップ)を特定し、解決策を洗い出す

  5. マップを「ストーリー」として可視化する

活用されないマップの3大原因

  • 妄想ではなく、事実に基づいて作る

  • 最初から細かく作りすぎず、シンプルに始める

  • マップを「全体戦略(OS)」と接続させる

BtoBの場合は特に注意

  • 複数の意思決定者(DMU)を考慮する

  • 「社内調整フェーズ」を縦軸に追加する

  • インタビューでは「きっかけ」と「不安」を深掘りする

カスタマージャーニーマップは、正しく作り、正しく運用すれば、あなたのビジネスを大きく前進させる力を持っています。

しかし、「作ること」に満足してはいけません。マップはあくまで出発点。そこから「全体戦略」を描き、優先順位をつけ、実行に移す。そのサイクルを回し続けることで、初めて成果に繋がります。

この記事が、「会議室の壁のシミ」ではなく、「チームを動かす羅針盤」を手に入れるきっかけになれば幸いです。

顧客の旅を理解した先にあるのは、自社の「勝ち筋」の発見です。

地図を手に入れたら、次は羅針盤を。あなたのマーケティングが、迷いのない航海になることを願っています。